さて、小回りでもこの谷回りのポジションを作るには、どのような事が大切なのでしょうか?

切り替えでのスキーと体の入れ替えを、クロスオーバーまたはアンダークロスと言います。


SJ7月号の柏木デモの特集では、「谷回りのポジションは、その前のターンの山回りから切り替えの動きによって、自然に決まってくるものなので、山回りこそが重要になる。」と書いてあります。
確かにその通りなのでしょうが、それはすでに小回りでも谷回りのポジションを作れる人に対するアドバイスで有って、そもそも谷回りの無い小回りをしている人に言っても、どうにもなりませんよねえ。
ゲレンデで滑っているスキーヤーを見ていると、谷回りの有る小回りをしている人はごくわずかです。殆どのスキーヤーは常にスキーが体の前にあって、左右にスキーを振っているだけの小回りになってしまっています。
大回りでは谷回りのポジションを作れる人でも、小回りになると時間に余裕がなくなるので、谷回りの部分を省略してスキーを振ってしまう人が多いのです。
まずは小回りでも、谷回りのポジションをちゃんと作れるように、小回りの練習方法を変えていく事が先決だと思います。
ポイントは前後動です。
図をご覧ください。スキーヤーを真上から見たと想定してください。
図A 図B


切り替えでのスキーと体の入れ替えを、クロスオーバーまたはアンダークロスと言います。
このとき左右の横移動だけを行うと図Aのように、スキーに対して後ろから後ろの入れ替えになってしまいます。
本来のクロスオーバーは図Bのように、スキーに対して斜め後ろから斜め前方に移動するべきです。横から横への運動だけでなく後ろから前への運動が必要なのです。
その理由の一つはターン後半が減速、ターン前半は加速して行く場面だからです。
もう一つの理由は、ターン運動を前方の高い位置から始め、脚を曲げながら荷重する事で、より大きな力に耐える事ができるからです。いわゆる腰高のポジションを取る事が目的です。
SJ6月号の丸山デモの特集に、解りやすい写真があったのでお借りしました。






クロスオーバーの場面で、身体がスキーに対してどのように動いているのか、良く解ると思います。
ターン後半でスキーより後ろの低いポジションから、ターン前半はスキーより前の高いポジションに身体が移動しています。また小回りでも谷回りのポジションが、はっきり現れている点にも注目してください。
ちなみに丸山デモは「ターン前半でしっかりした足場を感じ取れるポジション」と言っています。また「スキーのトップからテールまでしっかりと使う」とも言っています。
ここ二~三年はロッカースキーの登場や、ブーツの設計がくるぶしの真下に荷重点が有るようになって来た事などから、踵荷重でスキー操作をするように指導している所があります。その為に踵荷重=後ろ荷重だと勘違いしている人がいます。
踵に荷重点があるだけで、前荷重か後ろ荷重かは別の話です。混同しないように注意してください。